子どもとともに疑問を温め、「中学受験の理科」に備える

2022年3月15日

小学生は本来、理科好き

理科は身近な現象について学ぶ、小学生が興味を持ちやすい科目です。しかし生活が便利になり過ぎたせいでしょうか、理科を得意とする子と苦手とする子との差は広がる一方です。その差は勉強時間にも表れ、理科に関しては、得意な子ほど短時間で力を付ける傾向が見られます。得意な子は他教科にたっぷり時間をかけられるため、受験、特に中学受験においては、このことが大きなアドバンテージとなります。

そこで今回は、小学生が理科が得意な子になるための秘訣をお伝えします。

その場しのぎの学習姿勢はマイナスしか生まない

まず前提として、理科はいわゆる暗記科目ではないということ。基礎知識を覚えるのは当然ですが、目先の結果を求めて丸暗記に走っても、その記憶は長続きせず、応用力も身につきません。時間の浪費ですね。それどころか、そのような学習姿勢は後々まで大きなマイナスとなり、まさに百害あって一利なしです。

「経験的に知っている」は親子で増やそう

最も大切なのは、本格的な学習に入る前に、様々な体験を通して「経験的に知っている」ことを増やしておくことです。

例えば、「三日月はいつも夕方しか見られない」「ブランコの立ちこぎでは、こぎはじめはしゃがみ、低い位置からは立ち、元の位置に戻ったらしゃがむことを繰り返すと加速する」など(これらは中学入試で問われます)。

そして、このような知識を無理なく増やすには、やはり外遊びに勝るものはないでしょう。シーソーやブランコで遊ぶ経験は、「てこ」や「振り子」など物理分野で大いに助けとなります。また、外で遊ぶうちに動植物と触れ合う機会が増え、生物分野の知識も増えます。ちなみに、冬は木の幹に入った亀裂の中を見てみましょう。うまくすれば、小さな昆虫たちが密集して冬眠する様子を観察できます!

ただし、子どもの意識が及ぶ範囲は広くないので、外遊びだけでは限界があります。そこで普段から月や星を一緒に見る、天気予報を見る、季節と花の話題を意図的に盛り込む、家事を手伝わせる(野菜の断面図をかかせる問題も出ています)など、親が意識して誘導してほしいのです。

「保留する力」を身につけさせるのは親の胆力

さらに大切なこととして「保留する力」があります。詳しく言うと、「疑問がすぐに解決しなくても、疑問として持ち続けたまま先に進む力」です。「電車の中でジャンプをしてもなぜ元の位置に着地するのか」「走る車から外を見ると近くの景色は飛ぶように後方へ流れて行くのに、なぜ月はついてくるのか」など、大人は知っていると済ませがちでも、子どもは大いに疑問に思うことが日常体験の中にあるはずです。このような疑問を温めたまま理科の学習に入れたなら、「なるほど!」「ああ、そういうことか!」と素直に感動できますし、これから先も長年の疑問が解決するのではないかとワクワクする気持ちも芽生えます。こうなれば、子どもは能動的に取り組むようになるでしょう。 そのためにも、子どもが疑問を持ったときに、親がすぐに理屈で説明するのは控えてください。なぜなら、「疑問はすぐに解決されるべきだ」という意識が強まり、頭を使おうとしなくなるからです。一問一答形式の問題が減り、その場で考えることを要求する昨今の入試への対応も難しくなります。むしろ、すぐには解決できないこともあるのだと伝えることこそ親の役割なのではないでしょうか。

卵のように疑問を温める

繰り返しになりますが、理科を得意とするか否かで他教科にも大きな影響が出ます。親の胆力を発揮し、子どもと共に疑問を温めましょう。それこそがわが子の学力を後押しする秘訣なのです。

(2022年7月浦安新聞掲載)